「愛着障害が辛く生きづらいのは、マルトリートメントのせい?」
愛着障害とは、幼少期の愛着形成に何らかの問題を抱えている状態のこと。
本記事では、愛着障害につながるマルトリートメントについて、愛着障害の症状や対処法とともに解説します。
マルトリートメントや愛着障害に思い当たる節がある方、愛着障害の症状や対処法を理解されたい方は、本記事を参考にしてみてください。
マルトリートメントとは
「マルトリートメント」とは、子供に対する大人の不適切な関わり全般を意味する言葉です。
1980年代から欧米で広まった表現で、虐待だけでなく、子供の健全な発達を妨げる不適切な関わりすべてを指します。
マルトリートメントを受けると、発達段階にある子供の脳の大事な部位が傷ついたり、脳の一部が萎縮したりするのが明らかになっています。
さらに、マルトリートメントによって養育者との心理的な結びつきがうまく作れないと、情緒や対人関係などのトラブルの原因となる「愛着障害」を引き起こすのです。
愛着障害を引き起こすマルトリートメント例
愛着障害につながるマルトリートメントとは、どのような関わりを指すのでしょうか?
具体的な例を6つ挙げます。
- 身体的な罰
- 言葉の暴力
- 他の子との比較
- 夫婦喧嘩
- 嫌がる子供と一緒にお風呂に入る
- ネグレクト
一つずつ詳しく説明します。
身体的な罰
叩いたり、罰として長時間外に立たせるなどの身体的な罰は、愛着障害につながるマルトリートメントです。
体罰を受けると、子供は身体的な痛みだけでなく恐怖を感じ萎縮して、養育者との愛着を形成しづらくなります。
さらに、罰を受けることで「自分は駄目なんだ」という恥や屈辱を感じ、自己肯定感が下がっていきます。
また、子供が体罰を受けると、痛みに鈍感になるように脳の一部の神経回路が細くなることが分かっています。
身体的な罰は、マルトリートメントに当たり、子供の愛着形成をはじめとするさまざまな面に悪影響を及ぼすのです。
言葉の暴力
「バカ!」「あなたなんて産まなければよかった」など言葉の暴力も、愛着形成に悪影響を与えるマルトリートメントに当たります。
子供が言葉の暴力を受けて心が傷つくと、「自分はダメな人間なんだ」と感じ、自己肯定感を育めません。
これ以上言葉で傷つけられないよう、他人に対して心を閉ざしてしまうことも。
このように、養育者との信頼関係を築けなかった結果、愛着障害に陥るのです。
他の子との比較
愛着障害につながるマルトリートメントとして、兄弟やお友達など他の子と比較することが挙げられます。
子供は比較されると、精神的に追い込まれて、自分を過小評価するようになるからです。
また、他の子と明らかな差別的な扱いをすることもマルトリートメントとされます。
他の子との比較で子供の自己評価を下げてしまうことは、愛着障害につながってしまうのです。
夫婦喧嘩
子供のいる前で夫婦喧嘩をすることや夫婦間の暴言を聞かせることも、マルトリートメントになります。
両親の姿に子供は恐怖を感じ、「安心できる居場所はない」と感じてしまいます。
すると自己肯定感を育めず、両親との愛着を形成しづらくなるのです。
夫婦喧嘩の見聞きを何度も繰り返していると、子供の脳が「もうこの状況を見たくない」と判断し、脳の一部が縮小して語彙力や理解力が低下してしまうこともあります。
このように、夫婦喧嘩はマルトリートメントに当たり、子供の愛着形成に大きな悪影響を及ぼします。
嫌がる子供と一緒にお風呂に入る
見落としやすいマルトリートメントの一つに、嫌がる子供と一緒にお風呂に入るという行為があります。
大人側の意図に関わらず、子供が嫌だと思っている場合はマルトリートメントになるのです。
子供が異性の大人の裸を「見たくない」とと感じているのに無理やり一緒に入浴しようとすると、脳の視覚野が変形してしまうこともあります。
さらに、異性の大人がお風呂上がりに全裸でウロウロするという行動も、マルトリートメントになる可能性が。
子供が嫌がることをするのはマルトリートメントとなるので、入浴やお風呂上がりの行動には気を配りましょう。
ネグレクト
ネグレクトも愛着障害を引き起こすマルトリートメントに当たります。
不適切な養育環境で育つと、人に対する基本的な信頼感がうまく芽生えなくなってしまうからです。
ネグレクトとは、食事を与えない、不潔にするなどの育児放棄や育児怠慢です。
また、怪我や病気をしても病院に連れていかないなどの行為も、ネグレクトになります。
子供の心身に大きな悪影響を与えるネグレクトは、マルトリートメントであり愛着障害につながるのです。
マルトリートメントで引き起こされる愛着障害の症状
マルトリートメントによって起こる愛着障害には、どのような症状があるのでしょうか?
5つの症状があります。
- 強い不安感や孤独感
- 頑張りすぎる
- 人と共依存関係に陥る
- 人と自分を比べがち
- 人との距離感が分からない
一つずつ詳しく解説します。
強い不安感や孤独感
マルトリートメントによって引き起こされる愛着障害の症状として、強い不安感や孤独感があります。
養育者との愛着を形成できなかったことによって、人に対しての不信感が強く、いつどこにいても「自分はここにいていいのだ」という安心感を得られません。
そのため、常に不安感や孤独感に苛まれてしまうのです。
頑張りすぎる
愛着障害があると、自分を顧みず何でも頑張りすぎてしまいます。
養育者に認められようとするあまりに、過度に頑張ることが日常的になっているからです。
大人になってからエネルギー切れを起こして、ひどいうつ症状が出てしまう場合もあります。
人と共依存関係に陥る
マルトリートメントによる愛着障害のために、人と共依存関係に陥ってしまう場合があります。
愛着障害による自己肯定感の低さによって、他人とどう接すればいいか、どのように愛せばいいかが分からなくなるのです。
そのため人に対して高圧的な態度で接したり、へらへらと人の言いなりになったりして、共依存関係に陥りやすくなります。
人と自分を比べがち
常に人と自分を比べてしまうのも、マルトリートメントによる愛着障害の症状の一つです。
愛着障害によって、ありのままの自分でいいんだという自己肯定感を育めていないために、人との優劣で安心感を得ようとするのです。
人と比べて優っている場合にしか自分を認められなかったり、人より劣っていると感じた時に過度に落ち込んだりしてしまいます。
人との距離感が分からない
愛着障害があると、人とどう距離感をとっていいのか分からなくなります。
愛着障害によって人を信用できず、適切な信頼関係を築けない場合が多いからです。
そのため人を極端に避けたり、逆に接近しすぎたりして、適度な距離がとれなくなってしまいます。
マルトリートメントの愛着障害が辛い時の対処法
マルトリートメントによる愛着障害がひどい場合には、対処が必要です。
具体的な対処法を3つお伝えします。
- 安心できる場所を見つける
- 言語化をする
- 専門医に相談する
詳しく説明します。
安心できる場所を見つける
マルトリートメントによる愛着障害が辛い場合には、まず安心できる場所を見つけることが大切になります。
養育者との心理的な結びつきを得られず、ありのままの自分を受け入れてもらった安心感が足りないことで、愛着障害が起こっているからです。
「自分はここにいていいんだ」という心の安全基地が見つかると、安心感を感じて、愛着障害の症状が落ち着いてくるはずです。
言語化をする
自分の辛い気持ちや要求を言語化していくことも、必要になります。
言語化をして相手に伝えられるようになると、人と良好なコミュニケーションが取れるからです。
また、言語化をする力が高まると、自分で自分の気持ちを分かってあげられたと、自分自身を認められるようになります。
すると自己肯定感や自己効力感が高まっていき、愛着障害の症状の軽減につながるでしょう。
専門医に相談する
愛着障害の症状がひどい場合は、専門医に相談するなど専門機関を頼りましょう。
症状が重く辛い場合は、パーソナリティー障害やうつ病などの精神疾患を発症している恐れもあるからです。
一人で抱え込んだり我慢したりせず、辛い時は専門医の力を借りてくださいね。
まとめ
本記事では、愛着障害につながるマルトリートメントについて詳しく解説しました。
マルトリートメントとは、子供に対する大人の不適切な関わり全般のことで、愛着形成に悪影響を及ぼし愛着障害につながります。
本記事をマルトリートメントや愛着障害を深く理解するきっかけとして活用し、愛着障害が辛く生きづらい場合には、対処法もぜひ参考にしてください。
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