「通常学級で、自閉症の子向けの支援ってしてもらえるのかな?」
「どんな支援が受けられるんだろう…」
自閉症のお子さんを持つ保護者の方で、このような疑問を抱くことはありませんか。
自閉症の子が通常学級でみんなと一緒に過ごすことは可能なのか、どのような支援を受けられるのか、分からないと不安に思いますよね。
最近では、自閉症の子もたくさんの支援を受けながら通常学級で安心して過ごせるようになっています。
本記事では、自閉症児が通常学級で安心して学び続けるための支援策や、実際に行われている支援の例をご紹介します。
自閉症の子が通常級で成功するためのポイントもお伝えするので、お子さんを通常級に通わせて大丈夫か気になっている方は、ぜひ参考にしてくださいね!
自閉症児が通常学級で学ぶための支援策とは?
学校では、自閉症児も通常学級で学べるよう、いくつかの支援策があります。
主な支援策は以下の3つです。
- 『合理的配慮』が受けられる
- 個別支援計画を立ててもらえる
- クールダウンする空間を確保できる
詳しくみていきましょう。
『合理的配慮』が受けられる
2016年に施行された「障害者差別解消法」により、自閉症を含む障害を持つ児童生徒には『合理的配慮』が提供される権利が与えられるようになりました。
また2024年にはすべての学校において『合理的配慮』の提供が義務付けられるようになりました。
合理的配慮とは、障害のある子供も他の子供達と同じように教育が受けられるように周囲が工夫や配慮をすることです。
学校教育では、障害があっても子供達が可能な限り自分の力が発揮できるようにサポートをしています。
自閉症児もこの合理的配慮を受けることで、通常学級で安心して過ごすことができます。
個別支援計画を立ててもらえる
個別支援計画というのは、子供一人一人の特性や課題に応じて作成される計画書です。
これにより、今学習面や生活面で困っていることは何か、今後どのように支援をしていけば良いのか、などがわかるようになります。
計画書は学校の先生と児童生徒、保護者が連携し、協力し合って作られるものです。
定期的に見直し、必要に応じて計画を立て直すなどして、より良いサポートができるようにしています。
自閉症児もこのような個別支援計画を立ててもらうことによって、通常学級でも適格なサポートを受けられます。
クールダウンする空間を確保できる
自閉症児は、ちょっとした刺激で突然パニックになったりストレスを抱えたりして、教室に居られないことも多々あります。
そのため、学校内には「クールダウンのための空間」が設けられています。
例えば、図書室の一角や専用の小部屋など、静かで落ち着ける場所が適切です。
自閉症児が保健室や相談室を好む場合は、教員が「いつでも来ても良いよ」という呼びかけをして受け入れる体制を取っている学校もあります。
自閉症児がストレスを抱えた場合には、クールダウンできる空間を利用して、落ち着けるようなサポートをしています。
通常学級における自閉症支援の実践例
ここでは、自閉症児が通常学級で実際にどのように支援を受けているのか、私が経験してきた実践例をご紹介します。
通常学級で支援を受けていた、小学3年生のAさんの例です。
彼女が通常学級で過ごすためにしていた主な実践例は以下の3つです。
- 視覚支援を活用した学習支援
- グループ活動でコミュニケーション能力を育む支援
- 「ちょっとだけ休憩」のスペース作り
詳しくご紹介します。
視覚支援を活用した学習支援
自閉症児のAさんは、耳で聞いた指示は理解に時間がかかりましたが、イラストや写真を見て説明したらすぐ理解できたということがよくありました。
授業でもこの特性を活かした指導を行っていました。
例えば国語の時は、教科書の文章に対して、画像やイラストで登場人物の相関図や感情などを説明することで物語の理解を促します。
算数の場合は、解き方の手順を図で示したり、おはじきや積み木などを使って説明したりすると伝わりやすくなります。
時間割や1日の予定表は、色分けされた絵カードが有効的でした。
絵カードを使うことで、見通しが持てるようになり、予定に合わせて自分で考えて行動ができるようになります。
このように、視覚支援を活用した学習支援で通常学級での学習に取り組んでいました。
グループ活動でコミュニケーション能力を育む支援
Aさんが友達との交流をスムーズに行えるよう、意図的にグループでの活動を取り入れていました。
グループ活動をする際は2、3人の少人数制にして、落ち着いて行動できるよう配慮しました。
自閉症児はグループで会話することが苦手なのでうまく話が進まないこともよくあります。
Aさんがうまく話せない場合は、「コミュニケーションカード」を使っていました。
コミュニケーションカードは、「分かりません」「助けて」「少し待ってください」などの感情や要求を伝えるためのカードです。
これによって、自閉症児とのコミュケーションもスムーズにいき、また自閉症児本人もパニックになることを避けることができます。
このように、グループ活動をすることでコミュニケーション能力を育む支援をしていました。
「ちょっとだけ休憩」のスペース作り
長い間椅子に座っていることが困難だったAさんは、集中が切れると授業中に廊下へ飛び出し大きい声を出してしまうことがありました。
そこで、教室の後ろに「ちょっとだけ休憩」してもいいスペースを設けました。
パーテーションで区切ったほんの少しの空間に、クッションを置いて座って休めるスペースです。
集中が切れてどうしようもなくなった場合には、ここで少し休憩をしてから授業にまた戻るという約束をしていました。
これにより、突然廊下へ出たり大声を出して授業を妨げたりすることは少なくなったのです。
このように、「ちょっとだけ休憩」のスペースを取り入れることで、授業を継続して受けられるよう支援をしていました。
自閉症児が通常学級で成功するためのポイント
自閉症児が通常学級で成功するためには、いくつかのポイントがあります。
教員はこれらのポイントをしっかりおさえることで、自閉症児がより良い環境で支援を受けられるようにしています。
主なポイントは以下の3つです。
- 教師・親・カウンセラーなど、チームで関わっていく
- 自閉症児特有の感覚へ配慮した設備や授業内容を取り入れる
- 進級した時など適切に引き継ぎをする
詳しくみていきましょう。
教師・親・カウンセラーなど、チームで関わっていく
学校では1人の大人が全てを担うのではなく、教師・親・カウンセラー・特別支援教育コーディネーターがチームとして子供を支えていく体制を取っています。
具体的には以下のような方法で連携しています。
- 定期的に集まって情報交換する機会を持つ
- 連絡ノートなどで日々の様子を共有する
- 医療機関などの専門家のアドバイスも取り入れる
- 保護者との連絡をこまめに取り合う
みんなで情報を共有して、それぞれができることを明確にしているのです。
このように、チームで関わることでより的確なサポートができるようにしています。
自閉症特有の感覚へ配慮した設備や授業内容を取り入れる
自閉症児には特有の感覚過敏があります。
そのため、教員は特有の感覚過敏に対して理解をし、自閉症児が安心して過ごせるように設備や環境を整えた授業作りが必要です。
具体的には以下のような配慮があります。
- 教室の照明を調整可能なものにする
- イヤーマフやヘッドホンの使用を認める
- 席の位置を本人の落ち着ける位置にする
- 毛布など落ち着くためのアイテムの使用を認める
- 黒板や教材の色合いを、刺激の少ないものにする
自閉症特有の感覚へ配慮した設備や授業内容を柔軟に取り入れることで、子供達が安心して学べる教室作りを心がけているのです。
進級した時など適切に引き継ぎをする
進級やクラス替えの際には、適切に引き継ぎを行います。
特に、新しい担任教師やクラスメイトに対しては、しっかりとした情報の共有が今後のクラス作りの要です。
具体的には、以下のような引き継ぎ方法があります。
- これまでの支援方法を書き残していく
- 実際にどんなサポートをしてどんな効果があったのか、または失敗した例などを具体的に伝える
- 新しい担任教師と前任教師が一緒に様子を見る期間を設ける
- 新しいクラスメイトに対してきちんと説明をする
- 本人へ、クラスが新しくなることを理解させる
適切に引き継ぎを行うことで、自閉症児本人も周りの子供達もスムーズに新しい環境に馴染むことができるようにしています。
まとめ
自閉症児が通常学級で楽しく安心して学ぶために、学校で行われているたくさんの工夫と支援策をご紹介してきました。
これまでご紹介した基本的なサポート体制に加え、教員はさらに「一人一人に合わせた支援」を日々模索しながらサポートしています。
自閉症のお子さんが通常学級で学ぶことに対して不安を抱えている場合は、これらの手厚いサポートがあるのでご安心ください。
全ての子供達が一緒に楽しく学び、共に成長していけたらいいですね。
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